住宅内覧会の立会い検査の専門家(建築士)と一般人(住宅購入者)。住宅内覧会時検査をする上でどんな違いがあるのか?

私は一級建築士として、住宅内覧会の同行検査を行っています(内覧会同行検査がとういうものか等はこちらのHPをご参照ください)。 内覧会時に住宅の機能的な不具合・施工不良を発見する方法は「非破壊検査」が基本です。 完成した建物をチェックすることになりますので、壁や床を剥がして中を確認するわけにはいかない んですよね。これは住宅購入者(一般人)も私のような専門家(建築士など)も同じ条件となります。 同じ条件下で不具合のチェックをするわけですから、確認作業として行えることも同じ・・それでは 何が違うのか、専門家の確認作業と一般の方の確認作業における相違点に関して、代表的な要素を ピックアップしてみたいと思います。

視覚以外の感覚(聴覚、触覚)を活用して不具合の判断が出来るのが専門家。

住宅検査 非破壊検査が基本となりますので、目に見える範囲の不具合であれば、一般の方でも発見することが 可能です。クロスの剥がれや建材のキズ及び仕様(色、サイズ)の間違いなどは、しっかり目視確認すれば 誰でも見つけ出すことが出来るものです。また、実際にスイッチを押してみて、機器が正常に動くかどうかの 「作動確認」も誰でも確認できる要素のひとつです。

このように「視覚」を活用して不具合を見つけることは誰にでも可能な要素となるわけですが・・実は、 不具合の中で機能的な問題・大きな不良要素となるものは、視覚では捉えられない部分(隠蔽部分)に こそ多々存在しているものなんですよね。壁や床の下地不良(歪、取り付け不良など)やすぐには目視 出来ない給排水管からの漏水及びタイル・石・フローリング材などの取り付け不良などがそんな対象となります。

逆に考えてみるとわかりやすいのかもしれませんが、”視覚では捉えられない部分にある不具合”だからこそ、 施工者にも見過ごされてしまい不具合が残った状態となっているわけです。ゆえに、機能的な不具合要素を 見つけるためには、視覚だけに頼るのではなく、「他の感覚(主に聴覚、触覚)を活用すること」が必要と なります。

視覚以外の聴覚や触覚を活用して、不具合を見つけるためには、「建築的な知識(壁・床などがどのように作られているかなど)」 「建材の知識(建材の性質・特徴)」「不具合の判断基準」を有していないと不具合であることが判断 出来ないんですね。すなわち、建築知識及び実務経験を積んでいる専門家の場合(もちろん人によって 知識量・経験量に差がありますので、専門家と名乗っているからといって、不具合を見出す技能を 有しているとは言えません。)は、聴覚・触覚を活用して隠蔽部分の施工不良などを見出すことも 可能なのです。

不具合か不具合ではないかの判断基準を持っているのが専門家(建築士)。何が施工不良なのかの見極めが可能。

「スイッチを押しても機器が作動しない」とか「床に大きなキズが付いている」などは誰しもが施工不良(不具合)で あることが判断できる要素となります。でも、実際に住宅内覧会に行って初めて気がつく人も多いのですが・・。 「何が不具合なのか」「どんな状態だと施工不良と呼んでいいのか」がわからないことに気が付くんですね。 ですから、必然的に一般の方は「窓・扉の開け閉めがスムーズに出来るか」「キズや汚れの有無」 「設備機器(照明など)が上手く作動するかどうか」だけを内覧会時に確認することになります。

ただ、本当はもっと本質的な不具合の有無を確認する必要があります。壁・床・天井などに歪(傾斜や凹凸など)が 無いかどうか、下地の取り付けに不具合が無いかどうかといった要素は、かならず確認しておかなければいけない要素のひとつ。 これら仕上げ建材の施工不良は案外多く存在しているものです。しかし、これらの要素を判断するためには、 不具合か問題無い範囲なのかの基準を知っていなければ判断が出来ないもの。数値的に「5mm〜6mm程度」差は誤差として 問題ないと判断できる要素もあれば、「2mm程度」の数値でも不具合として修繕してもらわなければいけない要素 もあるのです。

これらは、建築の知識・法規制の知識・建材の知識などを有していないと判断出来ない要素となるもの。不具合か どうかを判断できる対象を多く有しているのが専門家(建築士)と言う事ができるのではないでしょうか。

  • 目に見えない箇所の不具合を「聴覚・触覚」で見出せるのが専門家(建築士)。
  • 不具合がどうかに気がつかない要素も多々あるもの。建築知識・経験・法的知識で不具合の判断基準を持っているのが専門家(建築士)。

残念ながら専門家(建築士)だからといって、住宅検査の技能・知識・能力適正を有しているわけではありません。

一般人と比較すれば、専門家(建築士)に住宅検査を依頼したほうが不具合・施工不良が発見される可能性が高くなるのは 確かなことではありますが・・。残念ながら、専門家(建築士)だからといって、全ての人が住宅検査に関する知識・技能・ 能力適正(対応力)を有しているわけではないんですよね。同じ一級建築士であったとしても、その人が積んできた技能・知識経験 には大きな違いが存在しているからなんです。

例えば、「木造住宅」の設計・監理業務しか行ってきていない人は、「RC造・鉄骨造などのマンション」に関する設計・施工 の知識・経験は有していないことになりますので、マンションの検査能力は低いといわざる終えません。逆に、 どんなに大規模なマンション(RC造・鉄骨造)の設計・管理業務に携わってきていたとしても、木造住宅の設計・監理の 経験がなければ、木造住宅の検査技能は低いと判断されることになります。 まあ、当たり前のことではありますが、専門家といっても、個々の技能レベルによって検査能力には大きな違い(格差)が 存在しているのです。

個人事業者の建築士の場合は「コミュニケーション能力の有無」で判断。内覧会同行業者への依頼は、「地域性」を重視。

近年、内覧会同行検査を主業務としている「内覧会同行検査業者」が複数存在しています。年々内覧会同行検査業者の認知度も高まってきており、 全国的規模で対応している企業と地域密着型の企業が存在するようになりました。 このような「企業形態の内覧会同行検査業者」に依頼をするときには、正直・・運を天に任せるといった要素がどうしても、 大きくなります。業務依頼をするときに、対応してくれるのは、あくまでも事務職担当者。検査に来る検査担当者は、 社内スケジュールによって、決まるもので、どんな人がくるのかはわかりません。

また、内覧会同行検査業者の実情としては、雇用形態(社員)となっている検査担当者が多くいる企業もありますが、 多くの場合、地域ごとに「建築士と業務提携」する形で検査担当者を派遣していたりします。全国展開の企業ほど 地方においては、業務提携している建築士などが検査担当者となる傾向があります。それゆえに、検査担当者の 当たり外れの幅が大きい傾向があるんですね。であるならば、最初から全国規模の業者よりも、地域密着型の 業者に依頼したほうが良いのではないかと、私は感じています。

個人事業者の建築士の場合は、「誰が検査担当者なのか」が明瞭なのが特徴となります。”評判(良し悪し)”などの情報も 案外参考となるものです。企業の場合には、良き評判をもたらしているのが一部の担当者であって、その他は 中程度以下の対応実績という場合もありますからね。個人事業主として活動している建築士の場合は、その建築士の評価 であると考えることが出来るからです。

そこで、建築士に内覧会同行検査を依頼する場合、取捨選択上参考としたほうが良いのが「コミュニケーション能力の有無」です。 検査技術の高低などは、簡単に見極められるものではありませんので、「業務依頼の満足度」を高めるためには、 「コミュニケーション能力に長けている」と感じる方に依頼をするといいかと思います。これは、私の経験上から考えられる ポイントで、内覧会時の検査業務には、「コミュニケーション能力」が求められるものなのです。依頼者への説明や 施工業者・販売企業との折衝などがとても大切な業務要素となるからなんですね。

まずは、検査に関する相談という形で、内覧会同行検査を行っている建築士に「メール or電話」で連絡してみていただければと思います。メールよりも、電話のほうが、その人の人柄などが感じられますので、 なるべく電話で検査業務の概要なとを尋ねてみるといいかと思います。その時に「場所と内覧会予定日」だけは、伝えて、 対応可能な状況となっているかどうかだけは確認しておくといいかと思います。土日などの場合は予定が早々に埋まっていることも多い ものですので。

  • 内覧会同行検査企業を選別するときには、全国規模企業よりも、地域密着型企業を優先すると良いかも。
  • 同行検査を行っている建築士を選別するときには、まずは電話(メール)でコミュニケーション力を確認するのがポイントに。

*私(バウムプランニング一級建築士事務所)が行っている一戸建て・マンション内覧会の同行検査の概要はこちら をご参照いただければと思います。(対象地域は、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県(一部)となります。)